休日おでかけパスで乗り鉄デビュー①185系「踊り子」号に乗る

少し前の話になってしまいましたが、ゴールデンウィーク最終日の5月6日(日)、JR東日本の休日おでかけパスを使って乗り鉄デビューしてきました。

 

乗り鉄なるものの定義は、おそらく「主に鉄道を利用することが目的で鉄道を利用すること」だと思うのですが、その定義によればそれまで乗り鉄をしたことは無いと言えます。

何かの用事のついでにちょっと……ということはあっても、純粋に鉄道を利用することが主な目的で……というのは無かったのです。

つまり、僕もついに禁断の領域へ足を踏み入れてしまったということでしょうか(笑)

ということで、今回はその時のレポートなどを少し書いてみたいと思います。

 

今回の目的は二つ。

一つは185系の特急「踊り子」号に乗ることで、もう一つは長距離区間普通列車グリーン車で乗り通すことです。

185系国鉄時代に造られた最後の特急形電車で、1981年のデビューからはや37年経ち、数年以内に(おそらくオリンピックイヤーの2020年までには)引退も決まっているようで、これは引退の前に是非乗っておかなければと思った次第です。

普通列車グリーン車ですが、最近、用事で東京方面と行き来する際などに利用するようになりました。

その場合、普通列車で大体片道一時間半程度の行程なのですが、グリーン車の座席は普通車の固く窮屈なボックスシートに比べて格段に快適な為か、いつも時間的に少し物足りなさを感じます。

また、普通列車グリーン車を利用するのは片道と決めており(何分あまり贅沢を出来る身分ではないもので……)、疲れている帰路で利用することがほとんどなのですが、その際は大抵夜になっているので車窓をあまり楽しめなかったりもするのです。

そういうわけで、一度、昼間に車窓を存分に楽しみながら飽きるほど長時間乗り通してみたいなという願望がありました。

 

以上、二つの目的と休日おでかけパスの指定エリア内での移動という条件を踏まえ、大まかなスケジュールを立ててみました。

① 荒川沖→東京

② 東京→小田原(185系特急「踊り子」号)

③ 小田原→久里浜

久里浜→成田空港(普通列車グリーン車

⑤ 成田空港→荒川沖

185系特急「踊り子」号に乗るのは行程②の東京-小田原間で、普通列車グリーン車に乗るのは行程④の久里浜-成田空港間。

他は普通列車の普通車自由席を乗り継いで行きます。

本当は行程①③⑤でも普通列車グリーン車を利用したいところでしたが、何分あまり贅沢……(以下省略)

 

ちなみに、出発点は常磐線荒川沖駅でしたが、実は家からのJRの最寄り駅は土浦駅だったりします。

何故荒川沖駅にしたかと言うと、荒川沖駅前には格安で停められる駐車場があるからです。

(なんと駐車料金が24時間まで最大200円という)

ここでもケチイズムを発揮したわけですが、何分あまり贅沢……(以下省略)

 

まず、荒川沖駅指定席券売機で休日おでかけパスと東京-小田原間の自由席特急券を買いました。

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 休日おでかけパスはJR東日本が企画販売しているフリーパスチケットです。

土日祝日およびその他指定日に、東京近郊の指定エリア内におけるJR線の普通・快速列車の普通車自由席が乗り放題になります。

JR線以外にも、東京臨海高速鉄道東京モノレール線が乗り放題になります。

別途、特急・急行券、グリーン券等を購入することで、新幹線を含む(ただし東海道新幹線は除く)特急・急行列車や普通・快速列車のグリーン車に乗ることも出来ます。

東京近郊でいろいろ巡ってみたい時など、かなりお得でおいしいチケットなのではないでしょうか。

このチケットを駅で購入する場合はみどりの窓口指定席券売機で購入可能です。

 

そして、こちらが自由席特急券

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JRの特急料金にはA特急料金とB特急料金が設定されているのですが、185系特急「踊り子」号はB特急料金が適用となります。

区間を走る251系の「スーパービュー踊り子」号はA特急料金適用です。

高崎線の「スワローあかぎ」号や常磐線の「ひたち」「ときわ」号は、これとは異なる料金体系が設定されていて、自由席の設定が無く全車指定席になっています。

何だか少しややこしいのですが、いずれJR東日本の特急料金はスワローあかぎ方式で統一されるのかもしれませんね。

 

それにしても、特急券を買ったのはいつ以来でしょうか。

12年前の2006年(平成18年)に北陸を一人旅したことがあるのですが、その時に特急「北越」号を利用した時以来かも。

その北越号も今や過去のものなのですが……。

 

荒川沖駅から普通列車で出発して東京駅に着いたのが9時半。

東京から乗るのは10時東京始発の特急「踊り子」107号 伊豆急下田行。

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自由席は10両編成中後ろ2両の9号車と10号車の2両のみ。

僕は自由席を取ったので東京駅に着いたらすぐに9番線のホームで並んで待機していました。

すると向かいのホームにこんな列車が。

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4月28日~5月6日に大船-桐生間を185系で運行されていた全車指定席の臨時快速列車「足利藤まつり」号です。

こういう臨時列車に思いがけず遭遇するとなんだか少し縁起良く感じます。

 

10時が近づくとこちらの9番ホームにもいよいよ185系「踊り子」号の入線です。

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やはり、そろそろ引退時期も迫って来ている最後の国鉄型の特急列車ということで、カメラを向けている人の姿がちらほら見受けられましたね。

 

ここで185系電車についての概要を一応少しだけ書いておきます。

デビューは1981年(昭和56年)。

京口の急行「伊豆」号などに使われていた153系を置き換えるために登場しました。

当初は急行形として計画されていたようですが、営業部門からの強い要請により特急形に変更されたと言われています。

153系は間合いで普通列車にも使われていたので、その運用がそのまま引き継がれ、185系普通列車にも使えるようにと設計されました。

そのため、出入口の扉は急行形と同じ広めの幅1000mmで両端に2か所設けられ、座席も当初は転換クロスシートでした。

(座席はJR時代になってからリクライニングシートに交換されています)

いわば、それまでの急行形と特急形の折衷的な設計で、特急形としてはいささかグレードダウンの感が否めず、その点で評価が良くなかったようです。

ただ、クリーム色の地に斜めのグリーンのストライプ線3本という国鉄らしからぬ斬新なデザインはけっこう評判だったようです。

185系はまず急行「伊豆」号としてデビューしましたが、153系の置き換えが完了すると、特急「踊り子」号として走ることになります。

1986年からは「湘南ライナー」としても走るようになり、通勤時間帯の着席需要にも応えます。

一方、上野口では1982年(昭和57年)に高崎線上越線で使われていた165系を置き換えるため、耐寒設備と横軽対策が施された200番台が登場しています。

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(『小学館の学習百科図鑑31 特急列車』株式会社小学館 1982年 P28より抜粋)

1982年の東北・上越新幹線の大宮開業後、上野-大宮間を新幹線リレー号として走りますが、1985年の東北・上越新幹線の上野開業後は特急「谷川」「白根」「あかぎ」号として走ります。

現在は上野口から撤退し、東京口の特急「踊り子」号や「湘南ライナー」として走っています。

 

しかし、よく37年も走り続けたもんですね。

デビュー当時は自分がまだ小学1年生だったこと考えると、本当に時の流れを感じます。

余程造りが丈夫で使い勝手が良かったんでしょうかね。

185系は時に「遜色特急」などとも揶揄され、鉄道ファンにはあまり好かれていない印象でしたが、 37年にも及ぶ期間を第一線で走り続けているのだから、間違いなく名車と言って良いかと思います。

 

さて、いよいよ185系の車内に。

僕は最後尾の10号車に乗りました。

自由席なので早めにホームに並んだのですが、乗車率は東京発車の時点で1割にも満たなかったかな…(^-^;

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出発まで少し車内をぶらりと散策しましたが、初乗りなのどこか懐かしいという(笑)

そこかしこに「国鉄」の面影を感じました。

全体的にごつごつした質実剛健な作りの内装が、僕としては萌えポイントになります。

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特急形としては珍しい窓が開くタイプだったというのも、185系の大きな特徴の一つで、この辺りが「特急形」というより、やはりどこか「急行形」と言った方がふさわしいものを感じますね。

座席のシートピッチはかつての特急形普通車の標準だった910mm。

普通列車グリーン車の970mmに慣れてしまった身としては狭さを感じるかもと思っていましたが、改めて実際に座ってみると思ったほど狭くはなかったです。

ただ、これは体格にもよるのかもしれません。

180cm以上の大柄な人であれば、狭さを感じるのかも。

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また、足元の座席下が塞がっている古いタイプの作りなので、最近の特急形や普通列車グリーン車の座席のように前方の座席下に脚を伸ばすことは出来ないため、幾分窮屈に感じました。

長時間の乗車ではその辺りで疲労の差が出てきそうです。

 

 車内はしっかり手入れされている印象でしたが、さすがにデビューから30年以上経過しているので床や化粧板の色褪せや傷などが所々目立ちます。

(画像ではあまり分からないと思いますが)

 出発前、向かいのホームには今やすっかり常磐線特急の顔となったE657系の姿も。

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やはり、あちらに比べるとこちらは幾分見劣りの感が否めないですね(^-^;

特に鉄道好きでもない一般の客はもっとそう感じているんだろうな。

 

10時になりいよいよ185系特急「踊り子」107号伊豆急下田行の出発です。

否が応でも気持ちが高まりますね。

出発直後、鉄道唱歌のメロディが流れた後に車掌による停車駅と停車時刻の案内放送が始まります。

これもまた旅の気分を高める重要なイベントですね。

特急「踊り子」107号の小田原までの停車駅は品川、川崎、横浜、大船で、ほぼ1時間きっかりの行程。

停車駅はかつての153系急行「伊豆」号のそれが踏襲されていますが、1980年(昭和55年)の「伊豆」号のダイヤを見ると東京から小田原までは平均して1時間15分程度かかっている具合なので、「踊り子」号になってスピードアップはされているわけです。

ただ、現代ではその区間を快速「アクティ」が1時間10分程度で走るんですけどね(^-^;

 

停車駅と停車時刻の案内が終わるとすぐに車内販売員が回ってきました。

またこの車内販売という存在が旅の気分を盛り上げてくれる重要な要素です。

近年は駅中店舗の充実により車内販売を利用する客が減り、採算が取れないとのことから、特急列車でも車内販売を取りやめるケースが出てきているようですが、やはり車内販売は無くならないでほしいですよね。

車内販売員はアニメチックな声の若い女性で、顔つきもそれっぽく眼鏡をかけた可愛らしい方でした。

声優を目指されているのかもしれませんね。

もしかしたら、すでに駆け出しの声優さんで、生活のために副業で車内販売員をしているのかも。

そんな妄想を巡らせていると、背もたれにドスンというちょとした衝撃が……。

車内が揺れた弾みで、販売員さんの押していたカートが、僕の座っていた座席の背もたれにぶつかったようです。

販売員さんは恐縮して謝っていましたが、僕としてはかなりおいしい得した気分になりました。

あのタイミングで何か買うべきだったと今更ながら後悔しています。

 

列車は品川までスピードは控えめでしたが、品川を出ると徐々にスピードアップし、185系の営業最高速度である110km/hまで到達したかと思われますが、さほどスピード感は感じられませんでした。

まあ、僕は常磐線の特別快速の130km/h運転や、TXの快速の140km/h運転にもう慣れてしまっているので……(^-^;

列車は大船まではこまめに停車していた印象ですが、大船を過ぎると小田原まではノンストップで8駅通過となり、俄然走りが特急らしくなりました。

乗っている列車が駅を次々とすっ飛ばしてしていく様はやはり気持ちが良いもので、在来線特急の醍醐味の一つでしょうね。

そして、特急列車は何よりも目的地に早く到達することに意義があるのだと再認識しました。

 

そういえば、僕以外のお客さんも比較的短距離で利用している方が多いのが少し意外でした。

僕が乗っていた車両が自由席というのもあったのかもしれませんが、小田原に着くまでにもけっこう客が入れ替わっていましたね。

「踊り子」号に乗る客は大抵熱海や伊豆方面への観光客なのかと思っていたので、小田原までの利用というのに若干申し訳ない気分も抱いたりしていたのですが、それは全くの考えすぎだったようです。

僕の前の座席に座っていた方などは、川崎から乗って大船で降りて行きました。

車内で特急券を買っていたので、座席の空き状況などを見て急遽乗ることにしたのかもしれませんね。

利用が50kmまでだと自由席の場合、B特急料金は510円なので、その区間普通列車グリーン車で行くよりも安くなるし、おまけに少し早く目的地まで行けるとなると、その方が得かもしれません。

そういう意味では、やはり185系の「踊り子」号は特急というよりも急行的な性格を持つ列車という気がしました。

 

小田原に近づいてくると、車窓から見える光景も緑が増えてきます。

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右前方には富士山の姿も。

富士山を見ると無条件でテンションが上がりますね。

 そうこうしているうちにも、「踊り子」号は快調に飛ばし、あっという間に小田原駅に到着。

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こうして1時間に及ぶ185系の特急「踊り子」号の旅が終了。

この後「踊り子」号は熱海・伊豆方面へと向けて発車していきました。

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ホームの反対側には快速「伊豆クレイル」号がお出迎え。

「伊豆クレイル」号は常磐線特急の「スーパーひたち」号として走っていた651系を改装して造られたリゾート列車で、運行中車内ではでは食事なども楽しめるそう。

近年こういうジョイフルトレインが本当に増えましたよね。

この列車も特に狙っていわけではなかったので、思いがけず遭遇出来てラッキーでした。

なんだかこの日は鉄道運的ツキがありました。

 

せっかく小田原まで来たので、改札を出て少し駅周辺をブラブラしました。

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小田原は箱根に近いし、駅やその周りの雰囲気は完全に観光地然としていますね。

外国人の観光客が多かったのが印象的でした。

 僕はと言えば、駅前散策も程々に、次なる目的のために久里浜へ向かうべくすぐホームに戻ることにしました。

 

185系電車はデビュー以来、昭和から平成、国鉄からJRと、東京口と上野口の変遷と歴史を見続けてきた車両。

国鉄がJRとなり、時代が昭和から平成になって、次々と新しい形式の車両が誕生し、東京口や上野口の列車の運行体系もすっかり様変わりしましたが、185系は変わらず愚直に走り続けたという印象です。

デビュー間もない頃こそ軽快で斬新なイメージの車両でしたが、今回乗ってみてその走りは「いぶし銀」と形容するのがふさわしく、まさしくそれは僕の好きな「急行」の姿でした。

もう、残された時間は少ないかもしれないですが、最後まで力強く使命を全うして頂きたいものです。

僕はもう一回くらいは乗りに行きたいですね。

 

ということで、今回はここまで。

次回は普通列車グリーン車の旅についてです。