2020年3月14日ダイヤ改正について(快速あいづ号編)

前回からの続きで、今回は指定席が導入された磐越西線の快速列車あいづ号について思うところを述べようと思います。

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今回のダイヤ改正で、磐越西線の郡山-会津若松を走る快速列車3往復に指定席が導入され、「あいづ」の愛称が付けられました。
指定席はE721系電車のクハ車車内の半分程度のスペースに設けられたリクライニングシート14席。
車椅子利用者に対応した席もあるとの事。
シート間ピッチは960mm。
コンセントは未設置との事ですが、座席自体はJR東日本の特急列車の普通車座席とほぼ同水準であると言えます。
料金は座席指定料の530円(閑散期330円)となっております。


磐越西線の同区間には、かつて「ばんだい」という愛称の付いた快速列車が運行されていました。
455系クハ車を1両改造してグリーン席と普通指定席を設けた編成もありました。
また、485系を使用した特急「ビバあいづ」やそれを格下げした快速「あいづライナー」が運行されていたこともあります。
元々優等列車の需要が一定程度あったことはうかがえ、沿線自治体からも優等列車を望むような声もあったかと思われます。
しかし、過去の実績から、特急列車やグリーン車よりも快速列車に指定席を導入する方が適切と判断されたかと推察します。

今回のこの動向、僕にはかなり興味深いです。
昨年にはJR西日本の新快速に有料座席のAシートが導入されたりしましたが、このように、快速列車に使われている一般形車両の普通車の一部を改造して有料座席を設けるのは最近のトレンドなのかもしれません。
こうした快速列車への有料座席の導入は、わざわざ特急を新設する程でもないが一定程度の優等列車の需要にも応える為の一手となっているように思えます。
乗客にとっては、特急に近い快適さを享受できながら特急よりも手軽で安価に利用出来るサービスで、かつてなら急行列車が担っていた需要の一部に応えているとも考えられます。
そこが興味深く思えた点です。

昭和40年代後半くらいから、在来線優等列車は急行を廃して特急に一本化というのが一貫した大きな流れでした。
その流れが加速した昭和の終わりの国鉄時代末期の頃も、まだまだ経済成長が信じられていたし、もっと豊かで便利になるという明るい見通しもあったし、バブルも経験し、特急一本化の流れを後押ししていました。
それは2016年の急行はまなす号の廃止で完遂した感があります。

しかし、すでにバブルが崩壊し、失われた20年を経ている今、潮目も変わっているように思えます。
高速道路網の発達、高速バスの充実など、移動手段の選択肢も増えました。
近年の房総特急の縮小の例などから、在来線特急の行く末も決して安泰ではないようです。
特急が苦戦している所もあるのです。

ある程度旅客需要がある路線であるならば、そこで花形となるような魅力的な看板列車の存在って必要だと思います。
普通や申し訳程度の快速しか走っていないというのはやはり何かが物足りない。
そして、そういう看板列車は何も特急である必要はなく、有料座席を導入した愛称付きの快速でも良いと思うし、もちろん急行でも良いはず。
時刻表を見ていても、列車種別は快速でも愛称や指定席が付いている看板列車が複数本走っていれば、その路線の印象が大分変わります。

特急にはかつて持たれていたような庶民の手に届かない高嶺の花といったイメージはありませんが、やはり特急は特急で乗客にはそれなりの経済的な負担が求められます。
専用の車両を用意しメンテナンスしなければならないとか、鉄道会社にもそれなりの運用コストがかかり、安易に走らせることはできないのでしょう。
しかし、路線によっては、特急をわざわざ走らせる程でもないけど、観光需要や着席需要はそれなりにあるという場合もあるかと思います。
そういう場合、今回の磐越西線のように快速列車に指定席を設けるのは、ある程度乗客のニーズに応えられる上に鉄道会社にとっては運用のコストが抑えられるという両者にメリットのある有効な一手であると感じた次第です。


今回、磐越西線で行われた快速列車への指定席導入を僕は前向きに捉えたいです。
もっと鉄道を利用してもらって地域に人を呼び込もうという積極的な姿勢を感じたからです。
これが吉と出れば、快速列車への有料座席導入という動きはもう少し広がって行きそうです。
少々強引ながら、これはある意味で急行列車の復活と言えるのかもしれません。
急行愛好家の僕にとってはなかなか見逃せない動きなのです。


ということで、今回の記事はここまで。
今回をもってダイヤ改正に関する考察記事は終わりにしたいと思います。