今回の記事は前回の記事の続きに書こうと思っていた内容で、国鉄に関する子ども時代の思い出話を少ししようと思います。
国鉄末期の1980年代の半ば、僕はまだ小学五年生で、父の仕事の都合で住いが関西の兵庫県から関東の神奈川県に移ったことがありました。
それと共に、目にするようになった鉄道風景もそれまで関西で見ていたものとはがらりと変わったように思います。
私鉄はもちろん、同じ国鉄と言えども地域による特色の違いは少なからずあり、それまで図鑑でしか目にしたことのなかった横須賀色の111・113系や185系の特急踊り子号などを見かけると、ああ関東に来たんだなあと実感したものです。
引っ越して間もない頃、東海道本線や横須賀線を行き交う普通電車を眺めていたときに一つ驚いたことがありました。
それは、普通・快速列車全てにグリーン車が連結されていたことです。
(現在では、東北線、高崎線、常磐線の普通・快速列車にもグリーン車が導入されているが、当時、首都圏では東海道本線と横須賀線・総武快速線のみだった)
それまで普通列車のグリーン車を実際に見た記憶が無く、また普通列車でもグリーン車が付いているものがあるという知識もなかったので、グリーン車は新幹線や特急・急行列車に付いているものだという固定観念を抱いていました。
だから、普通列車にグリーン車が付いているということが不思議に思えたのです。
また、十両を超える長い編成中に連結されている2両のグリーン車は、普通列車にもある種の風格を持たせているように思えて、さすがは東京だと感心もしたものです。
そして、いつしか、普通・快速列車のグリーン車は憧れの的となりました。
車両側面の小窓から覗く、背もたれに白いリネンのかかったえんじ色のロマンスシートが整然と並ぶ光景には神々しさすら覚え、それを眺めてはため息をついたものです。
もっとも、当時の普通・快速列車のグリーン車に使われていた座席は、特急列車の普通車に使われていたものと同程度の簡易リクライニングシートで、さほど豪華でもなかったようですが、特急列車や新幹線でなくてもそういう座席に座れることにかなり特別感があるように思いました。
普通列車にアッパークラスの車両が付いているというシチュエーション自体に、今風の言い方をすると、「萌えた」ということになるのでしょうか。
えんじという統一された座席の色も特別感に一役買っていたように思います。
親にも何度か普通列車のグリーン車に乗せてくれとねだったりもしたのですが、そんなものに高いお金を払うのはバカバカしいと一顧だにされませんでした。
(残念😢)
ちなみに、それまで住んでいた関西でも、1980年頃まで東海道山陽本線(現在の神戸線の区間)を走る普通・快速列車にグリーン車が連結されていたそう。
僕もそれを目にする機会はあったはずなのですが、記憶は全くありません。
おそらく、1980年頃はまだグリーン車という概念を知らず、グリーン車を見てもそれをグリーン車と認識出来ずに記憶に残らなかったものと思われます。
その頃の僕はまだ幼過ぎたのか、前面は同じ東海顔だった急行形電車と近郊形電車の区別すらよくついていない程度の認知と理解だったので、まあ、無理もなかったかもしれません。
それでも、同じく同区間に1980年まで走っていた153系の新快速ブルーライナーのことはよく記憶に残っていますが、それはきっと特徴的な塗装デザインにかなり強い印象を持つことが出来たからだと思います。
話を普通列車のグリーン車に戻すと、結局、その後もずっと普通列車のグリーン車に乗ることはありませんでした。
中学に入ってからは、鉄道への関心が薄れてしまい、普通列車のグリーン車への憧れの気持ちも薄れ、乗ろうとも思わなくなってしまいました。
自分が初めて普通列車のグリーン車を利用したのは、本当につい最近のことです。
(その時のことも、いずれ記事にしようかと思っています)
国鉄時代、僕にとって憧れの的だった普通列車のグリーン車がこちら。
(『最後の国鉄電車ガイドブック~今、振り返る国鉄時代ラストを飾る360形式』P48より引用)
書籍からの引用なので控えめに載せますが、これが当時よく見かけたサロ110形1200番台。
東海道本線や横須賀線の普通・快速列車に使われていた111・113系電車のグリーン車を代表する形式です。
これは横須賀線で使われた横須賀色のサロですが、もちろんオレンジと緑の湘南色バージョンもありました。
ところで、「代表する」としたのは、111・113系のグリーン車にはこれ以外にいくつかのタイプがあったからです。
それらをいくつか挙げておきます。
まずは、111系のデビューと共に登場した111・113系グリーン車の基本形とも言えるサロ111形0番台。
急行用のサロ153形から改造されたサロ110形0番台。
また、横須賀線・総武快速線用に新製投入されたサロ113形1000番台。
(このサロ113形は一時期関西方面に転属して使われていた時期もあるようです)
さらには、特急形のグリーン車から改造されたサロ110形300・350番台、急行形の普通車から改造されたサロ110形500番台などという変わり種もありました。
僕の記憶が正しければ、上記の車両は全て実際に目にしているはずです。
特急形から改造されたサロ110形300・350番台などは車体の高さが異なっており、見た感じかなり違和感があったことを覚えています。
ちなみに、上記のサロは前回の記事で紹介した『最後の国鉄電車ガイドブック~今、振り返る国鉄時代ラストを飾る360形式』でもカラー写真入りで紹介されています。
これらのグリーン車の多くは国鉄の民営化間もなく廃車されていますが、今となっては、どのタイプにも乗ることが出来なかったのが残念ですね。
画像のサロ110形1200番台は2006年まで使われていたようなので、その気になれば乗れたのですが、僕の鉄道熱が再燃したのはここ二三年のことなので、残念ながらその機会を持つことは叶いませんでした。